熔壌ガラスについて      ※週刊ポスト(平成元年9月1日号)現代の巧たち 掲載文より抜粋




現代の錬金術師 江副行昭は、
なんと土をガラスに変えてしまう。

 江副行昭は高遠のさらに奥の山にスタジオを構えている。かれの仕事ぶりを見ていると、現代の錬金術師かと思えてくる。なにしろ江副は土そのものをガラスに変えてしまうのだ。

超高温で熱すると土もまた、ガラス状に溶けていく。化学的に考えれば納得できなくもないが、ガラスといえば石英の粒からなる砂、即ち硅砂を溶かして得られるものだと常識は教えてくれる。にもかかわらず、江副は土にこだわった。

試行錯誤をくりかえすうち、偶然かれは理想の土とめぐりあう。ガラスのようにしっとりと溶ける土である。さらにその土には豊富な酸化金属が含まれており、それが発色剤となって微妙な色あいをかもしだしてくれた。それが高遠の土である。
「日本の文化に違和感なくとけrこんでいくガラス器を作るのが夢だったんです。青畳にあぐらをかき膳の上には鮎の塩焼き。それを盛りつける皿も純和風ガラスなら、傾けるグラスもまた、日本風土から生まれたガラス器」

高遠の土と、江副の巧みな技が相俟って不思議な魅力を秘めたガラス器を生みだしていく。


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※この取材後、しばらく文通もあったが故人となった山際淳司氏を偲び、名文の一部を引用させていただきました。(江副行昭)